防犯カメラの音声プライバシーを解説。おすすめ運用方法
企業のオフィスや店舗に防犯カメラを導入する際、近年は犯罪リスクの軽減を目的に「音声」も録音できる機種が増えてきました。
しかし、映像だけではなく音声も記録保存する場合、現場の従業員やお客からクレームが来る可能性もあります。そこで、ここでは音声付きの防犯カメラのプライバシーや違法性の有無、おすすめの運用方法を詳しく解説します。
防犯カメラのプライバシー侵害問題は昔から散見
防犯カメラに自分が映ることを不快に感じ、カメラの撤去を要請したり裁判で損害賠償を請求する事案は実は昔から散見されます。
よくあるのは道路の公道や隣家、マンションの公共スペースに防犯カメラを設置し、近隣の利用者が訴えを起こすというケースです。
過去の判例から分かる防犯カメラのプライバシーの違法性
過去の判例を見ると、防犯カメラの撤去要請の裁判はおおむね却下される傾向にあります。そもそも防犯カメラの設置に違法性はまったくありません。防犯カメラを企業や個人が設置する目的は、大前提として「犯罪・事件・事故を未然に防ぐ」ことにあります。そのため、防犯カメラで行き交う人々が映ってしまうことに対して違法性はないというのが国の考え方となります。
一方で裁判で違法性が認められて、防犯カメラの撤去が必要となるケースもあります。それは上記の事件や事故を未然に防ぐ目的以外の設置です。
例えばマンションの公共スペースに居住者が個人で防犯カメラを設置したことに対して同じ居住者が薄気味悪いと撤去を求めた裁判では、「防犯カメラを設置する本来の目的から逸脱している」と撤去が命じられました。
過去の判例を見てみると、撤去が命じられる(違法性が認められる)のは個人が防犯カメラを設置するケースに偏っています。
音声付き防犯カメラを設置するときは「個人情報保護法」に注視を
音声付き防犯カメラを設置するときは「個人情報保護法」を一度確認するといいでしょう。防犯カメラを設置する企業は「個人情報を取り扱う個人情報取扱事業者」となり、個人情報保護法(プライバシー)の侵害をしてはいけません。
簡単に言えば防犯目的以外の使用は禁止のほか、「防犯カメラ作動中」、「防犯につき映像・音声録画中」といった看板を防犯カメラの傍に設置することが求められます。
また、社内オフィス・各種店舗では、防犯目的のために映像と音声を録画保存し、警察からの要請があればデータを提出することも従業員に周知させることも必要です。
防犯カメラを設置する前に個人情報保護法(プライバシー)のガイドラインを確認
防犯カメラを設置する前は、個人情報保護法(プライバシー)のガイドラインを確認するのがおすすめです。確認するのは内閣府外局の個人情報保護委員会のWebサイトにある通則、及び地方自治体が提供しているガイドラインとなります。
ガイドラインは遵守しなければ罰則対象となるわけではありませんが、場合によっては条例違反となる可能性もあるので、設置する際は必ず考慮しなければなりません。
防犯カメラは音声付きが防犯対策として有効な理由
昨今は機密保持が強く求められるオフィスや医療現場、事務所、または対人でクレームが発生しやすいコンビニやショップ等では、音声も録音できる防犯カメラが主流になりつつあります。
現場の音声も録音できると、下記のようなメリットを享受することができます。
- クレーム発生時にお客と従業員の会話のやり取りが理解でき早期解決に繋がる
- 従業員同士の会話から内部不正を早期に把握ができる
- 医療現場や処方箋を作る際に上司から部下への指示内容を理解できる
上記も企業の防犯の一環として役立てることができるでしょう。注意点としては、防犯カメラの音声から従業員が私語をしていることが分かったとしても、それは注意すべきではありません。長時間勤務する社内ではある程度の私語は許容されるべきですし、上記でも解説したように、私語の注意は人の監視にあたり、防犯目的ではありません。
ただし、企業が防犯カメラで従業員を「モニタリング」すること自体は違法ではありません。
プライバシーを配慮した音声防犯カメラを設置。スマホで会話も可能
音声を録音、聞くことができる防犯カメラは、従業員のプライバシーを配慮する必要はありますが、各種業界問わず企業のリスクヘッジとして周知されるようになりました。
最新のネットワークカメラには、「スマホから音声を現場に伝える」機能が搭載されています。ネットワークカメラはインターネット環境の構築が必要ですが、無線で遠くのデジタル端末に映像を転送したり、パソコンやスマホから遠隔操作できるため非常に便利です。
防犯カメラ本体には指向性のマイクが内蔵されていますが、それとは別にスピーカーを外付けすることによって、管理者や経営者が自宅に帰宅後もスマホやパソコンで映像を確認しながら、必要であればマイクを使って現場に自分の声を伝えることができます。
企業がオフィスや店舗で音声防犯カメラを設置するときのプライバシー保護の留意点
企業が音声防犯カメラを設置する場合は、従業員のプライバシー保護はどのように守ればいいのでしょうか。下記では個人情報保護法のガイドラインを参照に留意すべき点をご紹介します。
録画した音声付き映像はしっかりと管理方法を決める
個人情報保護法、いわゆるプライバシー侵害にあたる大きな要因となるのが「防犯カメラの映像で個人を特定できるかどうか」となります。オフィスや店舗といった面積の狭い場所に防犯カメラを設置すると、音声・映像と共に個人を特定するのは容易です。
個人を特定できる映像データは、防犯や企業の従業員モニタリング以外の目的で使用するとプライバシーの侵害に抵触する可能性があります。映像データの管理方法はしっかりと決めてください。
音声付き映像データを閲覧する人を決める。警察に提出は可能
音声付き映像データを管理・閲覧する担当者も企業で必ず決めなければなりません。誰もが自由に閲覧できるような状況は好ましくないほか、目的以外での閲覧もプライバシー侵害の問題があります。例えば地方自治体の防犯カメラガイドラインでは、商店街が防犯カメラを設置する場合はモニターを置かず、警察から要請があった場合にのみ確認するといった条項があることもあります。
また、警察に映像データを従業員に無断で提出するのは違法ではありません。こちらも過去の裁判の判例を見ても合法となっております。具体的には防犯カメラは防犯目的で設置しており、これには事件や事故の早期解決も含まれます。そのため、警察の要請に従って防犯カメラのデータをわたすことは至極当然である、というのが裁判の見解です。
社内規定を作りプライバシー保護に対しても触れる
音声付き防犯カメラの映像管理は、上記のような保存方法・閲覧・管理担当者・第三者に提出する場合など、すべてを文字に起こして社内規定の1つとして作成・保存しておきましょう。プライバシー保護についても当然触れ、作成した規約は従業員から要請があればすぐに提出できるようにしておく必要があります。
まとめ:プライバシーを配慮した音声防犯カメラの活用でレベルの高い危機管理対策を
今回は音声を聞き取れる防犯カメラのプライバシーを配慮した設置と、個人情報保護法の観点から鑑みた推奨される管理方法を解説しました。
日本でも近年はプライバシーの侵害で裁判に発展するケースが増えてきたため、企業はより防犯カメラの管理・活用方法を厳守しなければなりません。
もし防犯カメラの導入に際して不明点・相談事がある場合は、販売店となる専門家に相談するのがおすすめです。