病院の放火リスクは日ごろの防犯対策で未然に防ぐ!
病院では「火災・放火」が近年重大なセキュリティリスクとして懸念されています。病院は施設の構造柄火の回りが早く、消化が遅れる可能性が考慮されるため、火災を未然に防ぐ防犯対策を構築しなければなりません。
そこで、ここでは病院における「放火」リスクを解説するとともに、防犯対策で未然に防ぐ方法をご紹介します。
病院で発生する火災の出火原因は「放火」が最多
全国約2500の病院が所属する一般社団法人日本病院会の調査によると、病院における火災の発生原因の最多は「放火」という結果でした。また、火災事件の中には出火原因が不明なものもあります。出火場所に火の元がないケースでは、同様に放火が疑われるため、それを含めれば、さらに病院の放火件数は増加することになります。
ちなみに火災の発生原因は「たばこ」、「調理機器」、「医療機器」が次点に続きますが、放火と比較すると火災件数は半分以下となるから驚きです。
参照:「病院火災の原因は「放火」が最多(FNNプライムオンライン)」
放火は発生したあとでは遅い
可燃物質や劇薬などが多数置いてあり、火の通りがいい病院では、一度放火により火災が発生してしまうと、瞬く間に燃え上がり、消化用スプリンクラーや常備している消火器では鎮火することはできません。そのため、火災を防ぐのであれば、「放火犯に犯行をさせない」、「放火犯を迅速に発見し、警告を与える」、「不審人物の侵入を許さない」といった、犯行を未然に防ぐ防犯対策が必要となります。
放火に対して特に注意すべき病院とは
病院の中でも建物内にあるクリニックや、入院設備(有床施設)のある総合病院は、放火に対して一層の注意を払わなければなりません。消防士は通報があってから1分以内に出動できるよう訓練されていますが、消防署に乗って病院に到着するまでは、およそ「8分間」要します。もちろん道中で渋滞している場合は、さらに遅延します。
放火のような意図的な火災の場合は、2分もすれば逃げ道がなくなるほど火の手が上がりますので、入院患者全員を避難誘導するのは困難となることが予想されます。2018年に大規模な病院の放火事件があったことを契機に、日本病院会はすべての病院に対して、火災に対する防犯対策の見直しを推奨しています。
病院に放火を企てる犯人とは
病院に限らず、放火犯は「犯人の特定が難しい事件」とされています。病院に放火を企てる犯人は、「当該病院及び関係者に対して、何かしらの恨みがある」か「特別な犯行動機のない愉快犯」と考えられますが、実際は後者のケースが多く、病院との繋がりはないことがほとんどです。また、計画犯もいれば、「上司に怒られて腹が立ったから」といった衝動的な犯行も多く、病院側が事前に予期をすることはできないこともリスクとして覚えておかなければなりません。
また、病院には死角となる場所が多く、敷地面積が大きければ、それだけ防犯対策が行き届かない場所も増えます。夜間であれば、放火犯が病院の敷地内に侵入して、犯行を実行するだけの時間もあるでしょう。そのため、病院側は不審者を1秒でも早く見つけて警告をする手立てを考えなければなりません。
放火犯が選ぶ病院内の出火場所
放火犯が犯行を病院で行う場合、想定される出火場所は下記となります。
・病室
・調理場
・エントランス
・階段の踊り場
・トイレ
規模の大きな病院であれば、院内に調理場があるので出火場所としては理想となりますが、最も多いのは病室となります。ただし、病室やトイレにはプライバシーの観点から防犯カメラを設置することは困難なため、やはり防犯対策としては「侵入を未然に防ぐ」ことが先決となります。
病院の放火を防ぐためにできること
多くの病院では、各所に防犯カメラを設置していますが、昨今は防犯カメラのそもそもの目的が見直されています。従来までは防犯カメラといえば、人や現場を監視することを念頭に設置場所や機種が検討されていましたが、現在は「犯罪を未然防ぐ」、「不審者を病院に侵入させない」ための防犯カメラの設置が強く推奨されています。しかし、大半の病院は5年、10年前の古い防犯カメラをいまだに使い回しているため、放火など病院におけるセキュリティリスクを防ぐ効果は年々低下していることが懸念されています。
犯罪の手口は10年前と比べると大きく異なりますので、当時設置した防犯カメラでは十分な機能を果たすことはできません。病院側は、侵入者に放火をやめさせるほどの脅威となる防犯カメラを設置しなければならず、それにはプロの防犯設備士の現地調査が必須となります。